楽園の炎
「面白そうだな」

小声でぼそぼそと会話する朱夏と兵士に、再びいきなり夕星が声をかけた。
思わず話し込んでいた二人は、ひぃっと小さく声を上げ、夕星を振り向く。

兵士が慌てて周りを見回した。
幸い皆、思い思いに談笑したりして、休憩に入っているようだ。
当のアシェンも、葵と何か話している。

「アルを、アシェンにやるのか?」

「そう簡単に、あげないわよ」

軽く睨む朱夏に、夕星は笑って、ちらりとアシェンを見た。

「さっき、向こうの庭を、その侍女殿と散歩していたようなのです」

素早く兵士が補足する。
夕星はアシェンとアルがいたというほうをひょいと見、にやりと笑った。

「ほぅ。なるほど、確かに」

「何?」

朱夏も同じように見てみるが、何があるのかはわからない。

「向こうには、ちょっとした植物園があるのさ。散歩には、もってこいだな。でも、あいつにそんな自然を愛でる趣味があるとは思えん。アルのためだな」

夕星の言うとおり、無骨そのもののアシェンが花好きだとか、考えられない。
いや、見た目で決めてはいけないのだが。

「ねぇ。やっぱりアシェン様は、アルが好きってこと?」

面白くなってきたと、身を乗り出す朱夏に、夕星は少し首を傾げた。

「ん~、でもなぁ。こういうことは、他人がどうこうするもんじゃないし。二人に任せておけば、いいんじゃないか?」

「まぁ・・・・・・そうだね。どうこう、なるかな?」

ちらりとアシェンを見てみる。
葵はアシェンの腕を、いろいろ聞いているようだ。
葵と喋っていても、相変わらずきびきびとした態度で受け答えしている。

そういえば、今までアシェンが笑ったことなど、あるだろうか。

---ま、あたしは、まだよくアシェン様のこと、知らないものね---

アルには笑いかけるのかもしれない、と思い、朱夏はくふふ、と忍び笑いを漏らした。
< 518 / 811 >

この作品をシェア

pagetop