楽園の炎
「確かにアリンダ様は、皇族らしからぬおかたに思えましたが。でも思っていたより、何というか・・・・・・スマートでした。何となく、刷り込みで、もっと粗野な感じのかたをイメージしていましたので」

「ま、見かけは憂杏のほうが迫力あるな。でもあいつはもっと、陰険なんだよ。外見はそりゃあ、あいつだって父上のお子だ。それなりだろうさ」

葵はまじまじと、横を歩く夕星を見上げた。
見れば見るほど、夕星はククルカン皇帝に似ている。

皇太子も、面影はあった。
が、アリンダには、皇帝の面影は見受けられなかったように思う。
それこそ、刷り込みがあったからだろうか。

「・・・・・・俺が、アリンダのことがずっと苦手だったのは、単にあいつが俺を憎んでたからだけじゃなくて、あいつが、あいつの母親に似てるからなんだよな」

葵の心を読んだように、夕星がぽつりと呟いた。

「残念ながら、壊れ具合も似てますね」

葵の発言に、夕星が驚いたような顔を向けた。
綺麗で大人しい印象の葵から出た言葉とは思えないというように、しばらくぽかんと葵を見つめる。

「・・・・・・なかなか毒舌だな」

「思ったことを言ったまでですよ。う~ん、ずっと朱夏と育ったからかなぁ。結構僕も、言いたいことを言う人間かもしれない」

頭を掻く葵に、夕星は笑い声を上げた。

「葵王も、何か変わったよなぁ。飾らなくなったというか。ずけずけ物を言うようになった」

「良いことなんですかね、それは」

微妙な表情になって呟く葵と一緒に、夕星は回廊を歩いていった。
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