楽園の炎
すぐに塗り薬を用意します、と言って、アルは憤慨しながら寝台を離れた。
そこへ、セドナが入ってくる。

「お目覚めになられましたか。ご気分はどうです?」

朱夏を窺いながら、セドナはぱんぱんと手を叩き、侍女を何人か呼び寄せる。
わらわらと入ってきた侍女たちが、水盆や着替えを用意する。

朱夏は、ふぅ、と息をついて、セドナに手招きした。

「あたしは大丈夫なんだけど。身体がさぁ、これ、酷くない?」

ちら、と衣を開いて見せると、セドナも、まぁ、と息を呑んだ。
着替えを持ってきた侍女から衣を受け取り、人払いをする。

「徐々に酷くなってますわね。昨日より、目立ってますわ。全く、これではしばらく、夕星様にお会いできませんわね」

他の侍女がいなくなってから、セドナは朱夏の夜着を脱がせた。
アルが、薬の器を持ってくる。

「内出血は放っておくしかありませんけどねぇ。ところどころに傷がありますね」

「だって、噛み付かれたりしたんだもの。爪を立てたりさ」

薬を塗るアルが、ぼそりと『クソ野郎』と呟いた。

「そうそうアル。で、ユウに呼ばれてたのよね。どうだった?」

一通り薬を塗り終え、セドナに着替えを手伝ってもらいながら、朱夏はアルに言った。
聞くのが怖いような気もするが、気になる。

アルは、ああ、と呟き、手を顔の前でぶんぶんと振った。
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