楽園の炎
ユウは立ち上がって、砂を払った。

「葵王に兄弟がいれば、他の誰かに王位を譲って、その代わりナスル姫より朱夏を取る、ということもできるかもしれんが、葵王はアルファルド王の、ただ一人のお子だろう。それに、ナスル姫が葵王を望んだのに断ったら、いくら王位を放棄しても、ククルカン皇帝の怒りは免れないかも。何せ、ククルカン皇帝の、ナスル姫の可愛がりようは、大層なものだからなぁ」

朱夏も立ち上がり、同じように砂を払いながら、じっとユウを見た。
ユウがまた、おっと、という顔をする。

「でもほら、まだわからんじゃないか。その前に、朱夏の気持ちも、まだわからないんだし。俺という人間も、視野に入ってきたことだし?」

誤魔化すように言い、ユウは朱夏に顔を近づけて、にっと笑った。
朱夏は一瞬何を言われたのかわからず、ぽかんとしていたが、すぐに赤くなって、ユウの背中をばしんと叩いた。
でも、文句は出てこない。

「そろそろ帰ろうか」

笑って差し伸べるユウの手を、朱夏は自然に握った。
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