楽園の炎
「お疲れなの? 朝のお茶の時間に呼ぼうかと思ったんだけど、まだお休みですって言われたわ」

「す、すみません」

ナスル姫は、朱夏に椅子を勧め、箱を開けて、大きな皿に一口大の焼き菓子を、ばらばらと入れた。

「いいのよ。別に急いでたわけでもないし、お仕事もあるでしょうから」

微笑んで言い、姫は自分も朱夏の前に座ると、どうぞ、と皿を示す。

「あの。何か、わたくしに用事があったのでは?」

てっきり用事があるから、わざわざ呼び出したのだと思っていた。
だからこそ、急いで来たのだが。
が、ナスル姫は、ふるふると首を振る。

「ううん。用事はないのよ。ただ、一緒にお茶しようと思って」

カップを両手で包み、姫はちょっと不安そうに声を落とした。

「・・・・・・迷惑だった?」

気が抜けて、ぽかんとしていた朱夏だが、不安そうな大きな瞳に見つめられて、慌てて大きく首を振った。

「とんでもない。むしろ、何もなくて良かったです。お呼び立ていただいてから、随分たってしまっていますし、もし急の用件があったのなら、多大なご迷惑をおかけしてしまっているわけですし・・・・・・」

朱夏の言葉に、ナスル姫は、ぱっと笑顔になった。
その途端、一気に部屋が明るくなったかのようだ。
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