楽園の炎
「アルファルドは、ゆるゆるだもの。何て言うか、のほほんと日々が過ぎていくのが当たり前で。ユウみたいな大きい人には、すぐに物足りなくなるわ」

「そうかな。・・・・・・まぁ確かに、ずっといたら飽きるかもなぁ」

「祖国に帰れるっていうのは、言うとおり嬉しいけどね。ユウが出て行っちゃったら、それ以上に悲しいわ」

隣に座る夕星の肩に、ちょんと頭を乗せる。

「俺が朱夏を、置いて出て行くわけないだろ。・・・・・・そうだな、長年暮らした朱夏がそう言うなら、ちょっと滞在しただけで飽きそうと思った俺の考えも、外れてはないわけだ。だったらやっぱり、コアトル知事だな。アルファルドは、まだ葵王の気持ちもあるし、決まるとしても先のほうさ。だが、ニオベとはね。世の中上手くできてるよなぁ」

朱夏の肩を抱いて、夕星は軽く笑った。
視線の先で、夕日が水平線にかかっている。

「コアトルは面白いぜ。宮殿だけでも探検のし甲斐があるし。港に行けば、いつも新しいものが入っている。人の出入りも多いが、その分情報も入る。市もでかいし、あそこで飽きることはない。叔父上も叔母上も、良いかただしな」

「空気も良いものね。皇弟殿下も、元は静養のためにコアトルにいらしたのよね。そこで暮らせるなんて、楽しみだわ」

水平線に沈む夕日を眺めながら、朱夏はまだ見ぬ未来に思いを馳せた。



*****終わり*****

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