だってキミが可愛すぎて
 
「ほな、ボクもう帰るわ」


そう言われて、軽く肩を押されれば、今まで密着していた身体はいとも簡単に離される。


昔からこうだ。


別れはいつも突然で、それを告げるのは必ず彼の方。


彼の熱を失った身体は、一瞬で冷え切ってしまう。


ほんの少し前まで抱き合っていたのが嘘のように、彼は何食わぬ顔で私に背を向けた。


「ほな、またな」


背を向けたまま、顔だけこっちに向けてそう笑って言った彼は、名残惜しそうな素振りを微塵も見せずに部屋を出て行った。


それと同時に、腰が抜けてへたりと床に崩れ落ちる。


だらしなく壁にもたれて座ったたまま、さっきまで彼がいた場所をぼんやりと見つめる。


……夢だったんじゃないかと思う。


今までのは全部夢だったんじゃないかと。


突然現れて、突然消えた彼。


あれはきっと夢だったんだ。


そう思いたいのに……。


中途半端に脱がされた制服と、鏡が映す首筋に残る赤い跡、それに……いつまでも激しく脈打つ心臓が、さっきまでの出来事が事実なんだと私に知らしめる。


「……なに、考えてんの」


頭を抱えてうずくまる。


「嫌い……大嫌い」


 

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