あの頃の夢
招待
明くる朝、
委員長はまた
お見舞いに来てくれた。

病院の味気ない朝食を終えると、
病室の入り口からジッとこちらを覗いている
委員長の姿が目に入った。

ぼくにはその空気が
気まずく感じられたのだけれど、
委員長は昨日のことで怒っている様子もなく、
跳ねるような仕草で病室の中へと入ってきた。

「おはよー」

いつになく
おどけた委員長の態度に、
さっきまでの気まずい想いが、
まるで何事もなかったかのように
サラリと晴れていく。

「うん。おはよ。 ・・・・・・あの、昨日は」

「昨日はごめん。お見舞いのつもりだったのに」

委員長は明るい調子で
あやまってきた。

あやまらないといけないのは、
ぼくのほうだ。

せっかく
お見舞いに来てくれた人に、
八つ当たりをしてしまったのだから。

「ううん」

ぼくは首を横に振って応えた。

「これ、昨日渡し忘れてた」

委員長はいつも
学校に持ってきている
手提げ袋の中から、
大きさがバラバラの
プリントの束を一つ取り出した。

どうやら、
休んでいる間に
配られたものらしい。

「うん、ありがと」

ぼくは少し
がっかりした気持ちを抑えながら
それを受け取った。

委員長は
これを渡しに来ただけなのだろうか。

今日は
遊びに来てくれたのだと思ったけれど、
本当は来たくなかったのかもしれない。

これも形式的な
お見舞いの一つなのだろうか。
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