二世

.最後の夜


今夜は高校時代の友人との飲みがあった。
メールや電話で連絡は取り合っていたものの、こうして会うのは卒業式以来であり、話は盛り上がり楽しい時間を過ごしていた。

「そっか。とうとう麻衣にも彼氏がね‐。」

集まった友人達の中で1番恋愛経験豊富な翠の言葉に照れて笑う麻衣。

「いいなぁ!あたしも早く彼氏欲しいのに。ねっ、那佳!」

自分のことのように騒ぐ佐和子の言葉に頷く那佳。
佐和子は瞳を輝かせたまま、麻衣と彼氏の馴れ初めについて聞き始める。
その様子を笑いながら見守る那佳は、氷が溶け薄くなったカクテルを飲み干した。


年頃の女の子だから、那佳も彼氏は欲しいし、幸せそうに笑う友達を羨ましく思うこともある。
誰かを好きになったことはなく、告白されても『違う』と思ってしまい、結果、彼氏いない歴=年齢の20年。


那佳はそんな自分にため息をついてしまった。
ふと自分を見ている視線に気付き、那佳は翠を見た。

「あんたは作らないの?」
「え?」
「彼氏よ。」
「あ‐。欲しいとは思うけど…好きとかそういうの良く分からないんだよね。」

苦笑する那佳を懐かしく思い、目を細めて笑う翠。


「高校の時もそう言ってたね。」
「え、そうだっけ?」
「まぁ、那佳らしくていいわ。変なのに引っかかることもなさそうだし。」
「うん。変な話だけど、大切に思える人と会うのは今じゃないって思う時があるんだよね。」
「まぁ…いつかは出会えるだうね。でも、待ってるだけっていうのも…王子様なんていないよ?」
「え、王子様?」
「そう。高校の時、たまに思ってたの。那佳は王子様を待ってるんじゃないかって…」
「それは私じゃなく佐和子だよ。」
「あはは!そうね。でも…、女の子は一度は夢見るよね?」
「それは、まぁ、そうだね。」
「わ‐!なんか恥ずかしい!キャラじゃないこと言った!」
「あははは。私もだよ‐」


笑い会う二人から聞こえてきた“王子様”に反応して、理想を語り出す佐和子。

会話は途切れることなく続き、夜は更けていった。



 
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