Hello my sheep
八鹿と奈緒のクラスはどうやら分かれてしまったらしく、クラス表を確認したところ二人の名前は別の枠に仕切られていた。


八鹿は一度奈緒と別れ、新しい自分のクラスへ向かう。

既に何人かは入学式の為に体育館への移動を始めていた。

自分の席は、と探して辿り着いたのは後方窓際の席。
外の桜がよく見える場所だった。


「ごめん八鹿っ父さんから電話来たんだ信じらんない!
早く体育館行こっ」

「あ、はぁい」


ふとまたふわふわと飛びそうになっていた意識を戻し振り返れば、携帯片手にやや不機嫌な奈緒が教室のドアから顔を覗かせていた。
とてとてと奈緒の元に行き、連れだって廊下を歩きだす。


「奈緒ちゃんパパさん、なんてー?」

「ほんとに登下校は車出さなくてよかったのかーって。
いらないし別に今電話して聞くことでもないっつーのに」

もう、と腹立たしげに溜め息をつく。
八鹿の家も、奈緒の家も少し一般家庭とは言い難い。

二人とも、俗に言われる社長令嬢、お嬢様と言うものだが、八鹿の家は家こそ多少近所より立派だが、昔から住み込みで働く家政婦以外に使用人はおらず、八鹿自身も甘やかされ過ぎることなく、厳し過ぎることなくどちらかといえば奔放に育てられた。

八鹿が幼い頃はお琴だのなんだのと習い事をしていたものの、中学に上がる際に本人がそこまで入れ込んでいないのを確認後、すっぱりやめている。


一方奈緒の家はと言えば、父親が絵に描いたような金持ちで、八鹿の家から歩いて行ける距離にある汐見邸には数人の庭番やハウスメイドなどの使用人がおり、奈緒自身にも専用の使用人がついている。

奈緒の父親は奈緒もその下の息子も溺愛していて、特に娘である奈緒は心配でしかたないらしい。
奈緒が父親の過干渉に腹を立てるのも八鹿には別段珍しい光景ではないため、「相変わらずなんだねぇ」とのんびりと返した。




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