こちら新宿中央署刑事課
第7章
     7
 坂野と岩永はタバコを吸い終え、各々のデスクへと戻る。


 岩永が立ち上げていたパソコンのディスプレイをじっと見続けていた。


 坂野も仕事を再開する。


 夜遅くまで署に詰め続けた。


 そしてそれから数日間、坂野たち新宿中央署の刑事は一月三日に発生した前島実業営業本部主任永嶋雄一朗殺人事件と、四谷の交差点で一月十三日の深夜に発生した松岡興業株式会社の岩沼孝一専務ひき逃げ事件に関して、鋭意調べを進めていた。


 ひき逃げの際に、路面に大型トラックのタイヤが強い振動でスリップした跡が数メートルに亘り残っていて、そのタイヤ痕は綺麗に採取され、鑑識へと回されている。


 岩沼専務ひき逃げは管轄である四谷西署巡査部長の粕屋が担当していた。


 それに例のカバンを鑑定した結果、古河村比呂氏と内多桂三の指紋に加え、事件に加担したと思われるもう一人の人物の可能性が高い石松貴朗のそれも発見されている。


 石松は都内のどこかしら――おそらく新宿からはそう遠くはない場所だと思われるが――に潜伏していて、二年前の三月に前島実業を退社した過去があった。


 バッグに指紋が残っていたことから、石松は何かを奪いたかったらしい。
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