こちら新宿中央署刑事課
「その危険性を踏まえて、あえて前島社長は株式を買い付けたんですね?」


「うん。賭けに出てるような気がするな、この男は」


 岩永が朝一で濃い目のコーヒーを飲みながら、同時に手元のパソコンも見ていた。


 ネット上でも株価が異常を来たしている。


 前島実業の一件で、日本橋兜町(かぶとちょう)は大混乱に陥りそうだ。


 あそこには日本の金融の心臓部である東京証券取引所があって、リアルタイムで株価が変動している。


 それに坂野たち警察官も今回の前島社長の株式取得に関しては疑問符を付けざるを得ない。


“なぜ今という時季に株主総会を開いたり、株式の大量取得を行なったりするんだ……?”


 腑に落ちなかった。


 単に証券市場を混乱させ、正当な株取引を妨害するのか……?


 それとも、この大不況の最中で株価が釣り上がったときに売り抜けるインサイダー取引をやってのける下準備なのか……?

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