独身マン
父が電話で、誰かに自分のメールアドレスを教えようとしていたときのことだった。



「おい、俺のメドアド書かれた紙ないか?」



父は母を呼びつける。 母は電話台の下に設置されている物入れから紙を取り出し、父に渡した。



「おお、それか。 えっと、メドアド・メドアド」



じっと紙を見つめた父。



「メード・・・。 あ、メールアドレス」



紙にはメールアドレスとちゃんと書かれていたため、初めて間違いに気がつく。 しかし何事もなかったかのように流した。 そして教える相手に電話をかける。



「あ、俺や。 アドレス言うぞ~」




例えばアドレスが[tabata]だったらとしよう。 彼は言う。




「たば、てぃ・えー」



なぜか“たば”だけ日本語で読み、“t a”はローマ字のまま読むこのオヤジ。



「次は、えーのまる!」



えーのまるとは、@(アットマーク)のことだろう。



威張って言うところがまた恥ずかしい。



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