独身マン
さえは黙ってご飯を噛む。 そして水を飲み、また一口分の米を掴んだ。 だけど食べずに言う。



「・・・。 別に恥ずかしがる事じゃないよ」


「ううん。 本当にわからない」


「・・・そう」



さえはそれ以上好きかどうかを尋ねなかった。 聞いても意味がないと察したから。 それよりも遊んだ日のことを詳しく聞いた。 でもなんとなく、さえの中ではもう答えが出ていた。



「バレンタインのチョコレートをあげたよ。 欲しいっていったから。 もちろん買ったやつ」


「へー。 全然きがつかなかったよ。 そんなそぶりお互いに全くなかったし」


「うーん・・・。 なんか変に職場ではさけちゃうんだよね」


「ふ~ん」


「で、土曜日の日に誘ってきたから普通に食事をしに行った。 買い物して、それで帰った」


「そう。 楽しかった?」


「う~ん・・・。 まぁ、色々おごってもらったり買ってもらったし。 よくわからない」


「あ、そう」



さえは思う。 口にはしなかったけど、春海はきっと正義を好きではないと。 ただ、“遊んでみたい”だけ。



「こないだの土日も遊んだの。 誘ってきたから」


「マジ? それって向こうは付き合ってるとか勘違いしてるんじゃない?」


「え~! それはないよ~。 私なんか」


「・・・」


人間って恐い生き物だ。 その言葉が本気なわけない。
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