ジュリアン・ドール
髪や眸の色さえまったく違ったが、確かにサロンの表情は、エルストン二十一世のものと重なっていた。そのことに気が付くと、なぜ始めて逢った時に気がつかなかったのだろう?と思うほど、サロンはエルストン二十一世の生まれ変わりに違いなかった。


どんなに、どんなに愛情を欲しても、エルストン二十一世はハーリーや妹のエルミラーラを愛してくれることは殆ど無かった。彼の愛情は、いつも腹違いの義妹であるジュリアンに向けられていたのだから。


そのことで、ハーリーも、エルミラーラも、いつも淋しい思いをしていた。


しかし、この時代に再び親子として生まれてきたエルミラーラとエルストン二十一世は、今では、あの時代に得られなかった愛情を取り戻すかのように、この親子の絆は恋人さえも叶わぬような強い絆で結ばれていて、ミサはサロンの愛情をしっかりと独占している。



(ああ、本当に良かったな、エルミラーラ)



ハーリーは心からそう思った。



「――どうかしましたかね?」



 ハーリーにじっと見つめられたままのサロンが、怪訝そうな顔をして訪ねた。



「い、いえ。失礼しました。・・・・・貴方様が余りにも知っている人に良く似ていたものですから」

「そうですか、私もここへはよく来るが、こんな時間まで長居する事はないので、貴方とは初めてお目にかかる事になるが、私も貴方とは今朝始めて会ったような気がしない。娘のミサも、逢ったばかりの君の事を大変気に入ったようで、昨日から君の噂話ばかりしていたよ。ここで再会したのも何かのご縁だ。宜しく頼む」



 サロンは、さっと、右手を差し出し、ハーリーに握手を求めた。



「いいえ、こちらこそ」



ハーリーは喜んでそれに応じ、二人は固く握手を交わした。
< 142 / 155 >

この作品をシェア

pagetop