恋心
嫌な予感ーNatsumi
「相原さん、ごめんこれ11号室持ってってくれないかな」
バイト中、イライラしながら床にモップをかけていると、西田さんがそう言ってピザの乗ったトレーをあたしに差し出してきた。
「あの、あたし掃除してるんですけど」
しかもお酒に飲まれて酔っ払った大学生が、ついさっきここに嘔吐してたの見てましたよね?
やらなくてもいいような仕事、嫌々引き受けたんですけど。
「あ、俺が変わるから」
西田さんはそう言うと、持っているトレーをさらに近付けてあたしに差し出した。
「っていうかもう終わるんで」
「じゃあ片付けておくから行ってきて」
ほら、と言わんばかりにあたしがトレーを受け取るのを待っている。
「ごめん。苦手なんだ、ああいう団体」
西田さんはそう言うと、申し訳なさそうに下を向き頭を掻いた。
「わっ、分かりましたよ!」
行けばいいんでしょ、行けば。
トレーを受け取り、11号室へピザを運んだ。
盛り上がる団体客。
椅子の上で飛び跳ねたりして、それはそれは楽しそうだった。