未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
キジモンが、レポート用紙をパラパラと捲りながら言った。
「すまんな。休み中なのに登校させて」
「いえ。ウチ近いし、いいんです」
休み中の職員室は先生の数も少なくて、蒸し返るような暑さに包まれている。
レポート用紙をトントンと机の上で揃えたキジモン。ふいと顔を上げ、あたしの顔をのぞきこんだ。
「時田、休み中になんかあったのか?」
「はい?」
「うん。明るくなったっていうか雰囲気が変わったな」
「そ、そうですか?」
「うん。別人みたいだ」
それじゃーまるで、よっぽど根暗だったみたいじゃない。
「あのぉ先生、もう帰ってもいいですか?」
「よしっ、いいぞ。ごくろうさん」
「失礼します」
扉へ向かって歩いていると、
「おい、時田」
って呼び止められた。
……もうっ、まだなんかあるの?
不満気な顔で立ち止まったあたしに、キジモンがニヤリと笑いかけた。
「これからデートか?」
「ち、違います! さようなら!」
別にデートってわけじゃないけどね……オヤジ、なかなか鋭いじゃん!