遠い坂道


 むしろ、合コン開いて良い人いたとして、今の彼氏はどうすればいいわけ。
 捨てろと。捨てろとおっしゃるのですか? 友美子様。


 なんてことは口が裂けても言えない。友美子はへそを曲げると相当厄介だ。


 高校の時に大喧嘩をしたことがあるが、どえらい目にあった。どんな目かは、言いたくない。


「てか、そろそろ休憩終わるんじゃない?」


 私の問いかけに、友美子は「ああ、そうだった」とゆるくパーマをかけた髪を耳にかけ、可愛いらしく微笑んだ。

 服装だって、花柄のワンピースで女の子っぽくて非常にいいと思う。これでズバズバ物を言わなかったら最高だ。


 友美子はバッグを肩にかけるとイスから立ち上がる。

 彼女はアパレル販売の仕事をしており、今は休憩時間だったのだ。
 教師になることは諦めた彼女だが、後悔はしていないという。アパレルの仕事はたいへんだけどやりがいがあるのだそうだ。


「じゃあね、真琴。また連絡するからちゃんとメール返してよ」


「はいはい」


 私は立ち去る友美子に手を振る。彼女の姿が雑踏の中へ消えると同時に、私も腰を上げた。



 日曜日の街は賑やかすぎる。



 友美子からのお呼びがなければ絶対に来ない。


 ……人混みは嫌いだ。


 私はさっさとその場から立ち去ることにした。



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