遠い坂道



 翌朝、私はいつもなら絶対に見ないニュースにテレビのチャンネルを合わせた。

 身支度を整え、簡素な朝食を摂る。バターナイフでトーストにブルーベリージャムを塗りたくった。最近、手軽だという簡潔な理由から朝はパン食が多い。


 今日は午後から授業があるので、ゆっくりと朝の時間を過ごせる。


 トーストをたいらげ、一旦席を立って冷蔵庫から牛乳を取り出した。


 一人暮らし故か、牛乳は注ぎ口から直接飲んでいる。はしたないが、コップ一つ洗う手間が省けるのだからいいだろう。


『続いて、今日の深夜未明に起きた接触事故についてのニュースです』


 テレビから流れた声に私は意識を向けた。


『本日、深夜0時過ぎ、A市A区にある大通りに面した交差点で、普通車と通行人二名の接触事故がありました。

 普通車を運転していた男はその場を逃走。事件後二時間経ってから警察へ出頭しました。男いわく、当時飲酒しており、かなり酒に酔っていたと自供しています。

 被害者である田村勝喜《たむらかつき》さん(高校二年生・十七歳)は搬送先の病院にて午前四時過ぎに死亡が確認されており、同じく高校二年生の少年(十七歳)も重体の模様です。二人とも塾帰りだったらしく、あまりに突然のできごとに彼らの家族も困惑が隠せないようで――――…………』



 テレビに映し出された事故現場の光景が、いまだ鮮明に残っている記憶とあいまって吐き気を誘った。



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