山田さん的非日常生活
まるで温泉に長く浸かっていたときみたいに、下から上へ、かぁっと熱が昇ってく。

いつもなら、なに気持ち悪いこと言ってんの、とかそっけない言葉で流すけど。


「……あたしも」

「え?」



「〜っ、だからあたしも!す…好きな人と一緒に、こうしてられるの、…幸せだって言ってんのっ!!」



…まだまだ可愛くはなれないけど、たまにはこっちだって、歩み寄ってあげてもいい。


ユデダコみたいに全身真っ赤になってしまったあたし。

幸せの塊みたいに、嬉しそうに笑うカボ。

あたしを引き寄せると、カボはぎゅっと、机越しにあたしの体を抱きしめる。


…効果音は、今回はないけれど。

ぎゅっ、だなんて、音はいらないから。だからこうしてすぐそばで、触れた温度を、強い力を。


もっともっと、感じさせて。




「…大好きです」
「…好きだバカ」




重なった言葉。


手にあったふかふかの甘いトーストが、ぼとりと畳の上に落ちた。

















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