山田さん的非日常生活
温泉だけはまともでよかった。火照った顔にタオルをのっけて、ぼんやりと宙を仰いだ。

今頃、カボも男湯でぐったり伸びてるんだろうな。


…さっきまでの容赦ないスケジュールに翻弄されてすっかり忘れていたけれど。


ぶくぶくぶく…と、熱いお湯の中に顔を半分埋める。


…なんだかまた、緊張がぶり返してきてしまった。

夕食が終わってからは、もう決められたプランはない。だから、部屋に、カボと二人っきりなわけで。


「はぁ……」


ぽとりと、顔に乗せていたタオルが落ちて、温泉の湯に浮かぶ。

お湯の中にユラユラと映る、自分の引き締まるの"引"の字もないたるんだお腹を見つけて、さらにため息が深くなった。


…もし。


万が一だけど、もし、そういう雰囲気になったらどうしよう。

全然想像できないんですけど。心の準備なんて全然できてない。多分、この旅館の料理長が作る夕食と同じくらい準備できてない。


無理やり足立に連れ回された買い物の帰り。足立に言われたセリフを思い出す。


『彼氏と一泊旅行でしょ?そんなの当たり前でしょ。しかも彼氏二歳年上だし』


…向こうはそうでも、あたしは高校生だし!


『あんたねぇ…そんなガード堅いと、嫌われちゃっても知らないよ?』


…そんなの、最近の男女が進みすぎてるだけだ。こういったことは結婚してからでいいと思うわけ。どうせ考え方が昭和ですよ。ええ、自分から明言しますよ、昭和の女、山田幸子!!


「はぁ……」


…ため息、何回目だろう。

自分を奮い立たせるかのように、ほっぺたを思いっきり両手で叩く。


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