『想いのカタチ』 (短編小説)

佐野:「俺が話さない訳、わかった?」

慌てて目を伏せると、佐野が蒼の顔を覗き込んだ。

佐野:「ずっと昔から、俺の中には蒼がいて…。負けたくなかったんだ…」
一ノ瀬:「……?」
佐野:「ゴメンな…いきなり…」
一ノ瀬:「…えっ…あ…いやぁ…」

そう言って佐野は立ち上がるとドアの前まで行って振り返り 優しく笑った。

佐野:「…あのさ」
一ノ瀬:「え!?」

佐野の声に動揺しながらも顔を上げる。

佐野:「今日の事、俺 本気だから」
一ノ瀬:「……」
佐野:「出来たら俺との事、考えて欲しいんだ」
一ノ瀬:「……」
佐野:「俺は蒼の事、守れると思うし…絶対淋しくさせたりしないから…」
一ノ瀬:「……」

そう残し佐野は部屋から出て行った。身体から力は抜け、思考回路は完全に停止したまま、部屋にヒトリ取り残されたのだった。
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