Long Road
ACT.5

「今日の授業は勉強になったけど、腕が腱鞘炎になりそう。」

さゆりちゃんが、笑いながら腕をさすった。

「ほんと、腕だるいね。あれだけ泡立てしたんだもん。」

私も笑った。

最近、体中に甘い匂いが染みついてきたような気がする。

まだ、製菓専門学校に入学して1か月だけれど、毎日がめまぐるしく、充実していた。

それにしても、今日のこの腕のだるさは、まるでコンクール前のようだった。

いずこも一緒だなあと、思うと少し笑える。

「泡立ては、パティスリーにとって命だしね。きっと、このだるさからは、一生逃れなれないんだろうね。」

さゆりちゃんのどこか誇らしげな顔。


すべてが、物珍しかった。


よくよく考えると、ハイスクールから、外国で学び続けていたわたしにとって、日本の学校へ通うのは中学以来だった。

もっとも、ここは学校ではなく、専門学校だから、普通の学生生活とは違ったのかもしれない。


とはいえ、音楽からかけ離れた生活は、新鮮だった。
< 38 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop