Clear.




ゴンッと鈍い音が響き渡る中
倒れこんだあたしの襟を掴んで
これでもかと言うくらい殴りつける。





「 お前がいなきゃよかったんだ 」





今までの記憶の中に
”母親”は当たり前のようにいない。
あたしの誕生日が、母の命日。
だから1度だって祝ってもらえなかった。





毎年くる誕生日は、地獄のようだった。





「 お前を殺して、俺も死ぬ! 」





狂い叫ぶ父を見て、
”もうだめだ”と思った。
この人の目は もうあたしを見てはいない。
あたしが生まれたその瞬間から
この人はもう 死んだ人みたいだった。





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