いつかの花。

小野真人


 私って、本当にタイムスリップしちゃったんだなぁ……。



 私が改めてそう思ったのは、真人さんの家に着いて、この時代の衣装を着せられた時だった。

 歩きながら話している時に、今は真人さんと呼んでもでもいいと言われたので、真人さんと呼ぶことにした。



「ふぉっふぉ。やはり蘭花殿には藍の色が似合う。名に通ずるだけあるのぅ」


「そ、そうですか……?」


「わしの目は確かじゃったのぅ!」



 蘭花=らんか=藍・花

 真人さんが言うには、名前と色とはそれなりに関係があるらしい。



 そうして今、私は『裳』と呼ぶらしい足を隠すくらいに長い白色のプリーツスカートを履かされ、下着みたいな白衣を身に着けていた。

 そして、お尻の下ほどまである藍色の前開きの上着を着て、腰にベルト代わりの藍色の布を巻かれている。



 この格好の何が大変って、とにかく重いこと。

 髪の毛も、何やらハーフアップにされて、左右で丸くまとめられているし……。

 あ、でも、桜の花と象ったかんざしは、すごく可愛くて気に入ってしまった。

 けど……なんでこの時代の服ってこんなに難しいの!?



 そう嘆かずにはいられない。

 私は果たして、この服を一人で着られるようになるんだろうか……。

 今回は真人さんからウネメと呼ばれていた女の人たちに、着替えるのを手伝ってもらった。

 けど、いつまでも頼ってばかりでいてはいけない。

 なんとか、自分で着られるようにならなければ!


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