いつかの花。

よく食べる女子高生


 穏やかにオルゴールがBGMで流れる、お洒落な内装の店内の、とある一角。



「ふぅ~、おなかいっぱい! もう大満足!」



 おなかをさする仕草をした親友を見て、私はゲッソリと返す。



「そりゃあ、あれだけ食べたら満足でしょ……。ていうかまり子は食べすぎ。見てるこっちまで胸焼けしそう……」



 目の前で見せ付けられた、まり子の食事風景。

 始めは「よく食べるな~」程にしか思わなかったのに。

 まり子は、それはもうよく食べていた。

 『その体の一体どこに、そんな量が入るの?!』と訊きたくなってしまうくらいに。



「え? だって、元の分はシッカリ取らないと」


「その元の分をはるかに超えていたでしょーが」


「えー。でも、蘭花も結構食べてたじゃん」


「私は元をキッチリ取っただけ。まり子ほどは食べてないよ」



 まり子の『最後のおかわり』の時に、店員さんの営業スマイルが引きつっていたのは、決して見間違いではないはず。

 そりゃあ、おかわりを十回もすれば呆れられて当然だ。


 ああ、他人の振りをしたかった……。



「そう? ま、いいか~。あ、それにしても、ここのケーキ本当に美味しいよね」


「確かにね」


「あーあ、河瀬君もこの美味しさを味わったらよかったのにな~」



 まだ言ってる……。


 まり子の『美味しいものはみんなで美味しく!』の持論に、河瀬は激しく反するらしい。

< 5 / 121 >

この作品をシェア

pagetop