いつかの花。
よく食べる女子高生
穏やかにオルゴールがBGMで流れる、お洒落な内装の店内の、とある一角。
「ふぅ~、おなかいっぱい! もう大満足!」
おなかをさする仕草をした親友を見て、私はゲッソリと返す。
「そりゃあ、あれだけ食べたら満足でしょ……。ていうかまり子は食べすぎ。見てるこっちまで胸焼けしそう……」
目の前で見せ付けられた、まり子の食事風景。
始めは「よく食べるな~」程にしか思わなかったのに。
まり子は、それはもうよく食べていた。
『その体の一体どこに、そんな量が入るの?!』と訊きたくなってしまうくらいに。
「え? だって、元の分はシッカリ取らないと」
「その元の分をはるかに超えていたでしょーが」
「えー。でも、蘭花も結構食べてたじゃん」
「私は元をキッチリ取っただけ。まり子ほどは食べてないよ」
まり子の『最後のおかわり』の時に、店員さんの営業スマイルが引きつっていたのは、決して見間違いではないはず。
そりゃあ、おかわりを十回もすれば呆れられて当然だ。
ああ、他人の振りをしたかった……。
「そう? ま、いいか~。あ、それにしても、ここのケーキ本当に美味しいよね」
「確かにね」
「あーあ、河瀬君もこの美味しさを味わったらよかったのにな~」
まだ言ってる……。
まり子の『美味しいものはみんなで美味しく!』の持論に、河瀬は激しく反するらしい。