いつかの花。

駅での待ち時間


 会計を済ませて、おしゃれな店内から出る。

 隣りを歩く親友のふわふわな髪を見て、自然に笑みが浮かんだのが自分でもわかった。



「じゃあね。また明日!」


「うん、また明日。寝坊しちゃダメだからね?」


「うっ。き、気をつけます……」



 ショボーンと肩を落とし、上目遣いをするまり子。

 苦笑を返しながら、並んで駅へ向かって歩いていく。



 まり子みたいな可愛さが私にもあったらなぁ。



 そう思ってはみても、現実的に考えてそれは不可能なことで。

 まり子はまり子で、私は小野蘭花という私でしかない。

 それを覆すのは、『世の中の理に反する』というものだ。 

 世の中の理がなければ、世界中は好き勝手のやりたい放題な、規制も秩序も安全もない、カオスになってしまう。



「あ、電車来てる!」


「え、まり子急ぎなよ!」


「うん! じゃあ蘭花、また明日ね! 勉強教えてね! 逃げちゃやだよーっ!!」



 よぉぉぉぉ!

 と、エコーを残して走り去って行く親友の姿は、潔い。

 それはもう、いっそ爽快なくらいに。



「はいはい、またねーっ!!」



 届いたかどうかはわからないけれど、私もそう叫び返して、自分の路線のホームへと降りていく。

 コツッ、コツッと、ローファーがコンクリートを叩く音がよく響いた。


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