始まりと終わりの間
"おはようございます…"

テレビからは元気な声が聞こえるけど、アタシは全く元気がなかった。

『隆也ぁ』

昨日の、あの甘ったるい女の声が頭から離れない。

隆也の好きなタイプも、何となく分かってたし、隆也の事を分かっているつもりでいた。

でも、アタシはアタシ。
変わるつもりはない。

『可愛くねぇなぁ』

そうかもね…
隆也が口癖のように言ってたもんね。

"雨ですが、夜には晴れるでしょう"

カーテンを開け外を見てみると、天気予報通り雨音が聞こえ、アスファルトも濡れていた。

どうもアルコールが抜けてない。
それに頭もボーッとする。

ま、夜まで出掛けるつもりもないから、ゆっくりしてよう…

携帯の着信が鳴った。
眠いから無視!
でも、ずっと鳴り止まない。

「しつこいなぁ…」

そのうち留守電に変わった。

「眠いんだって…」

マナーモードに変える。

そのまま眠ってしまえば良かったけど、誰からの電話なのか気になって留守電を聞いた。

『梓…起きたら電話して…』

隆也からだった。

悪いけど起きても電話する気にならないよ。

アタシの中で勝手だけど"始まったかもしれない"って思ってた。
でも…その人の彼女の声を聞いてしまったら『電話して』と言われても出来ないよ…

フラれたのに、まだ諦めきれないのかな…

隆也のメッセージを消す事が出来ないなんて…

「ホント…ムカつく…!」

ベッドに潜り込み、携帯を握り締めた。


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