始まりと終わりの間
19
「隆也…待たせてるんだから、もう戻らなきゃ…」

アタシを抱き締める隆也の腕が、なかなか離れなかった。

「隆也…」

「もう少し、このままでいたい」

「また電話くるよ?」

「そうだよな…」

隆也の腕の力が緩んだ。

「送るよ」

玄関から少し離れた駐車場に、隆也の車が停めてあった。
そこまで一緒に、手を繋いで行った。

隆也が助手席の小物入れを開けると、中にあった小袋を手渡した。

「何これ?」

「開けてみて」

中にはピアスが入っていた。

「あげる。俺の好きなデザインだよ。梓も好きだろ?シンプルで」

「うん…可愛い。でも、もらっていいの?」

「梓に似合うと思って買ったんだ。今度は捨てないでよ?」

「うん」笑いながら頷いた。

「それと俺の嫌いなネイルアート、もうしないで。シンプルがいい。あと…」

「まだ何かあるの?」

すると少し間をとって隆也が

「また来るから。次はちゃんと整理してから来るから」

と、真面目な表情で言った。

「そう?お互い納得出来てからにしてよ?セフレとか嫌だから」

笑いながら話した。

「梓…待ってくれるか?」

「多少はね。長すぎるのは無理だわ…待つのはキライだから」

「梓…」

少し困った顔をしてアタシを見た。

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