マスカラぱんだ
Drop*10

**いきなり弱る?**



**葵**

小児科に異動したからといっても、相変わらずの忙しさに変わりはなかった。

昼間の外来に、入院患者の診察や手術。そして夜勤もこなす。

それでも僕は、自分が希望した小児科勤務にやりがいを感じていた。

そして、休日は君とのデートを楽しむ。

ドライブにショッピング。映画に水族館。

どこに出掛けても、君とふたりきりの時間は楽しく過ぎ行く。

そんな充実した日々を送っていた、ある日。

医者として、嬉しい出来事が起きた。

僕が担当した、7歳の拓真君の退院が決まったのだ。


「葵先生。ありがとう。」


拓真君が僕に向かって、ペコリとお辞儀をする。

この瞬間が、医者をしていて一番嬉しい時だ。

笑顔で手を振って退院する拓真君に、僕も笑顔で手を振り返した。


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