君色デイズ
「っ!あなた……、」

「もちろん、大切なお坊ちゃまとして。」


でも、やっぱりそれに立ち向かうことはできないよ。
あたしは使用人、景雅様は大切なご子息。それは、ずっと、変わらない。身の程を知らなければならない。


「紗彩様がどうお思いであっても、あたしは桐生家にお仕えするものとして景雅様にもお仕えしております。それ以上でも以下でもありません。」


はっきりとそう言い放ったあたしを、紗彩様の訝しげな瞳が見つめる。そしてかすかに、ほんの少し上がった口角。


「………当然よ。」


最後にぽつりと零された紗彩様のひとことが、ぐさりと胸に突き刺さった。



◆◆◆



今日1日の業務を終え、控室でひとり座り込む。
なんか、今日は疲れた。脳内では紗彩様との会話がずっと反芻されている。

紗彩様が帰ってからもずっと、心臓が握りつぶされてるみたいに胸は痛むけど。けど、ほかに、何かいい方法ってある?お仕えする身であれば、毎日今と変わらず、共に過ごせるのだから。あたしはこれ以上望んではいけないのだと、望むべきではないと、自分にひたすら言い聞かせる。

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