夜獣-Stairway to the clown-
伍:「月並みだし」
あれから半年が経った。

色々と行事もあり忙しいような暇なような感じで過ごしている。

変わったといえば夕子を諦めたことと、夕子が乾と付き合ったこと。

あの事件以来、夕子と乾の中の進展は早かった。

学校帰りはいつも一緒なことが多い。

たまに夕子が友人と帰るくらいで、僕と帰ることはなくなった。

自分ではこれでよかったんだろうと思っている。

それが幸せの結果であるならば、満足だ。

ただの自己満足ではあるが、それを壊すなんてことはしない。

あの日買ったプレゼントは部屋にある。

捨てるのも売るのももったいないんで置いているが、上げる相手もいなかった。

雪坂に上げようとも思ったが、逆に迷惑だろう。

知り合い程度のやつに渡されてもどうすればいいか分からず、押入れの中に閉じ込められていく運命なんだろう。

だからこそ、手の中にまだあるのだ。

箱はつぶれたままであり、あれを見るたびにあの日を思い出してしまう。

いい思い出だと思っておこう。

夕子とは知り合い程度になるんだなと思いながら、窓の外を見ていた。

半年経っているので六回ほど席替えをした。

今の席は一番後ろの窓側の席である。

横になりたいとか後ろや前になりたいとかいう奴はいない。

荒川とは友達だと思うのだが、授業に集中できそうにないのであまり席は近くなくていい。

雪坂というと、今は隣の席になっていた。

こんな籤運も珍しいのだが、話すことなく勉強にいそしんでいる。

たまにわからないところを教えてもらうのだが、教えるのが上手い。

教師よりも上手いと思える。

伊達に長生きはしていないな。

よくあの樹の場所にいっているけど、雪坂はいつもそこにいる。

教室にいないとなると、そこしか行かないのかと思うくらいそこにいる。

僕もそこにいくのが日課のような感じである。

別に友達が荒川だけしかいないってわけでもない。

いろんな友達と昼休みを無駄に頑張ってサッカーをしたりもするが、こっちにいるほうがくつろげる。
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