Frist time


式が始まり校長の話やら会長の話やらがまあ退屈で、なんだか眠くなってきた。
こういう時っていつも思うけど話長すぎでしょ。たまにはこう、ぱっと話を終わらせてくれるような人いないもんかね。

そんなことを考えながら俺の斜め前にいる亮を見てみると頭がかくんかくんとなっているのが見える。
あいつは潔いいっていうか、なんていうか。




長かった式がやっと終わりを迎え、進行を担当していた先生からマイク越しに「起立!」という声がかかった。
その声にみんなで一斉に椅子から立ち上がったが、亮は爆睡していてみんなががたがたと立つ音で目を覚まし、急いで席を立っていた。焦っている顔がちらりと見える。

ぶっ。

思わず込み上げる笑いをなんとかかみ殺して、平静を装った。やっぱ期待を裏切らないな。最高だわ。




「あー・・・やっちゃった・・・」


体育館から教室へ戻る途中、亮は終始寝ていたことをすごく嘆いていた。


「入学式にあんな失態をさらしたら、俺、彼女できねーよ・・・」


「あれは面白かった。いいもん見れたわ、サンキュ。」


そう言って肩を震わせて笑う俺を、今度は亮がギロリと睨む。
亮があのことで彼女が出来ないとか嘆いているが、そんなことはないと思う。
身長もバスケをやっているだけあって、173センチの俺よりは少し低いものの160後半はあるし、少し癖のある髪をいい感じにセットしている。客観的に見てもそんなに悪くない部類には間違いなく入る。


教室について席に座っても、まだ落ち込んでいるみたいで、ぐでっと机に突っ伏しているのが見えた。俺はやれやれと思いながらふと、斜め前に視線をそらすと、飛び込んできたのは信じられない光景。
思わず目を見開いた。


なぜなら、俺の斜め前にいた奴が、あの時コンビニで見かけたかっこいい奴だったからだ。


まさか同じ学校で、同じクラスで、席が近いなんて。こんな偶然あるんだな。
自分では気づいていなかったけどあいつのことをじっと見てたみたいで、俺の視線に気づいてくるっとこっちに振り向いた。やべと内心焦っている俺をよそにあいつは爽やかに笑って、


「なんか視線感じたんだけど。笑
はじめまして。よろしくな。」


と言ってきた。


うわ、やべえ。
思っていた以上に、こいつ、かっこよすぎんじゃん。
俺の不躾な視線にも嫌な顔しないで向こうから話しかけてくるくらい、気さくでめっちゃいいやつだ。
笑った顔までかっこいいしな、非のうちどころがねえ。

て、俺、男にときめいてどうすんだよ。


「おう、よろしくな。」

平然を装って、俺も笑顔で返事をした。






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