リップノイズ



昔彼が

「俺の方向いて座って」
と彼自身の膝ん指しながら言ったので、恥ずかしかったけど大人しく座るとぎゅーっと抱き締めてくれたので分厚い肉の下にある心臓がぎゅーんとなった。

私も、と思って彼の首に腕を回すと
彼が私の首に噛みついてすごくびっくりした。チュウチュウと吸われてチクッとする。蚊に刺されたような後が残って、キスマークだと思うと全身の血が顔に上がって真っ赤になったってのが分かるぐらい暑くなった。

「真っ赤」

笑って言う彼は女の子が羨む白い肌。私が上にいるから上目遣い。なんだか、なんだか、

なんだか対抗心が芽生えて
彼の輪郭を両手で包んで私と向き合うように上に向ける。

びっくりしたらしい彼はちょっと瞳が揺れてる。

やっぱり恥ずかしかったから目を閉じてキスをした。いつも彼が私にするように、荒々しく唇を舌で舐めてチュウ、と吸う。無防備だった彼の歯列を私の舌は飛び越えてコーヒーの香りがする苦い舌を絡め取った。

全身が心臓になったようにドッドッドと鼓動がうるさい。

「ふっ、」

彼が色っぽい吐息を吐く。
その日は鼻の調子が良かったからガンガンガンと攻めようとした。私が上にいるから唾液は喉に詰まらない。でもあまり鼻呼吸になれていない無いからやっぱり息が上がった。
苦しくなって彼を半目を開けて見ると彼はいつもは眉を逆ハの字にしているのに普通のハの字。


すごく色っぽい。

私が舌を動かさなくなったのに彼が気付いて私をぎゅうとまた抱きしめた。そして取り込んだばかりの暖かい布団の乗ったベットに倒された。



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