Ti Amo



俺の問い掛けにぴくりとも反応せずにただただ、涙を流していた。



母さんの方へ近付こうとすると外から声がした。



そう言えば兄ちゃんの部屋に居る時、玄関が開く音が聞こえた。



父さんと兄ちゃんだと思い、玄関へと走る。



「お願い、父さん…。行かないで!」



玄関の扉を開けると、そこには父さんに向かって土下座を繰り返す兄ちゃんの姿があった。



「父さん。俺達、父さんがいなきゃ、これからどうすればいいんだよ。お願い…お願いだから…」



コンクリートの地面に頭を押し付けて声を荒げる兄ちゃん。



そんな兄ちゃんを上から見つめる父さん。暗くて表情は見えなかったが、きっと父さんも辛かったんだろう。



「最後の最後にそんな事するんじゃない陽太…。……すまない。母さんと、亮太と舞を…よろしくな。」



兄ちゃんは顔を上げなかった。地面に顔を付けたまま、肩をプルプル震わせていた。



しばらく兄ちゃんを見つめたままの父さんは


「すまない。」


その言葉を最後に家に背を向けて歩きだした。



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