《短編》猫とチョコ
『…陽菜子のこと、嫌いになったわけじゃないけど…』


「じゃあ何で?!」


張り上げた自分の声が震えていることくらい、わかってるけど。


言葉の間に流れる沈黙が、嫌に長く感じて。


それが、とてつもなく重くて怖い。



『…ごめん。
好きな人出来たから。』


「―――ッ!」



嘘だと信じたかった。


じゃあ、明日のお祭りは?


“楽しみだね”って言ってたのに。


生活は変わっても、お互いの気持ちが変わることはないって。


言ったのは、そっちじゃない。


コーちゃんは、二股してたの?


そんなこと、しない人だと信じてたのに。


どこから裏切られてたのかな。


今までのこと全部、嘘だったのかな…。



「…明日…お祭り…のに…」


『…悪いけど、行けない。
ホントごめんな。』


“じゃあな”と言って、静かに電話が切られた。


何も言えずに終わった関係。


通話終了の音は、そのままあたし達の終わりを告げているようだと思った。


今頃になって、涙が溢れてきた。


唇を噛み締めてみても、どうして良いのかもわかんなくて。


嘘だと信じる以外、他になかった。


なのに、刻一刻と時間が過ぎるたび、現実なんだと突きつけられているようで。


止め処なく涙が溢れる頭の片隅で、みぃの顔が頭をよぎった。


みぃは、チャラいんだと思ってたけど。


同じくらい彼氏だって、チャラかったんだって。


あれほど馬鹿にしていたのに、って。


情けなさ過ぎて、嫌になる。


< 21 / 65 >

この作品をシェア

pagetop