妖魔06~晴嵐~
終末

幻の花

一陣の風が吹く。

俺はあたりを見回した。

何も起こった気配がない。

しかし、何かが起こったような気がしたのだ。

「気のせいか」

「王子様?」

「なんでもない。ロベリアが気にする必要はないさ」

今、何が起こってもおかしくはない状況である。

だからこそ、どこかで起こった何かに構っている暇はない。

俺には目の前にある物を片付けていくしかないのだ。

「姉さんを悩ませてるんじゃないわよ」

ロベリアの隣にいた俺をジャスミンが押しのける。

「悪いな」

「あんたの謝罪なんてアテにならないの。信じるに値しないわ」

「すまないな」

隣にいなければ気に入らないという程に、ロベリアの腕に組み付いた。

敵はまだいるのか。

分らない。

邪魔をされる暇もないというのにな。

見覚えのある影を見た。

「クルトか」

一時期、共にいた仲間のクルトがこちらに歩いてくる。

「よ」

「何が『よ』だ!」

俺の足にローキックを食らわせる。

しかし、以前のような痛みは走らない。

「丞」

クルトの傍には美咲も立っている。

「久しぶり、だな」

「本当に、丞、なんだね?」
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