【短編】瞳
《やっ矢野君? どーしたの?》
そりゃ驚くよな。
初めて言うし。
ただ……。
初めて言ったからこそ。
気付いて欲しいんだ。
「無理か?」
《ごめんね……今日は無理なんだ》
「あぁ、わりぃ……邪魔して」
携帯を閉じた後、
また笑って、その男の元へ戻るんだな。
女って、すげぇよな。
何食わぬ顔で、他の男の前で男と電話出来るし。
尊敬するよ。
桜田でも……出来んだもんな。
平気で嘘もつけるんだな。
男って本当バカだな。
俺はそんな平気な嘘……つけねーよ。
つきたくねーよ。
准と波から着信が何回かあったけどブチッた。
出る気になれなくて。
何て言えばいー?
男と居ました。
会いたいなんて……言ったのに断られました。
んな事…言ぇねーし。
言える訳がねー。
その日、心の奥で待ってた桜田からの連絡は、こなかった。
ずっと家ん中で携帯を持ち歩くなんて……初めてした。
相当、桜田に惚れてたんだな……なんて今頃、自覚したんだ。