隣人は変人です


「捕まえた」

え?

私は誰かに後ろから、覆い被さるようにして、ふんわりと抱き締められた。

誰かじゃない。
彼の腕の中に入るのは初めてだけど、その匂いと声で分かる。

「葵ちゃん…」

「春花ちゃん、何でそんなに泣くの? イヤだった?」

顔を見なくても悲しそうなのが、声だけで分かってしまう。

もう私の身勝手な思い込みで彼を傷付けたくない。

振られたっていい。やっぱり私は"当たって砕けろ"精神で行く。

クルッと前を向くと、驚いてる葵ちゃんを無視して、背中に手を回して、ぎゅっと抱き付いた。

「えっえっえっ」

葵ちゃんはきっと困ってる。

でも。それでもいい。
私は伝える。


< 19 / 39 >

この作品をシェア

pagetop