隣人は変人です
「捕まえた」
え?
私は誰かに後ろから、覆い被さるようにして、ふんわりと抱き締められた。
誰かじゃない。
彼の腕の中に入るのは初めてだけど、その匂いと声で分かる。
「葵ちゃん…」
「春花ちゃん、何でそんなに泣くの? イヤだった?」
顔を見なくても悲しそうなのが、声だけで分かってしまう。
もう私の身勝手な思い込みで彼を傷付けたくない。
振られたっていい。やっぱり私は"当たって砕けろ"精神で行く。
クルッと前を向くと、驚いてる葵ちゃんを無視して、背中に手を回して、ぎゅっと抱き付いた。
「えっえっえっ」
葵ちゃんはきっと困ってる。
でも。それでもいい。
私は伝える。