とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~

刑事アンダーソン




自分のデスクを片付けながら、後輩達と挨拶を交わす。

初老のその男は警察に入って40年…刑事になって35年のベテランだった。

あまり期待されるような刑事ではなかったが、定年目前にして手柄を上げた。


『アンダーソン警部!』


そう言ってまた後輩が挨拶にやって来た。


『お疲れさまでした。
警部がいなくなると寂しくなります。』

『な~に…私がいなくても何も変わらないよ。』

『それにしても、先日の輸送車強盗事件!お手柄でしたね!!』

『…ああ…ありがとう。』


あの事件は定年1週間前に署に予告が来た事が発端だった。


定年間際ということもあり、事件を抱えていなかったアンダーソンが担当になったのだった。


『是非お話を聞かせて下さい!』


目を輝かせるその若い刑事にアンダーソンは話すのをためらった。


何せ自分にも未だに理解出来ないのだから…


『…天災が味方した…それだけだよ…』


アンダーソンはそう言ってダンボールに詰め終わった私物やファイルを持って立ち上がった。

彼はその答えに不満そうな若い刑事に穏やかに笑った。


『話したところで誰も信じないさ…

老いぼれの戯言としか思わないだろうよ。』


そう言い残してみんなに挨拶をすると署を後にしたのだった。


< 105 / 474 >

この作品をシェア

pagetop