とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



その場はそれで済んだが、マイクの事だからとてつもない事を言い出すだろう。


そう考えると少し楽しみでもあった。


日本にいるときはただでさえ目立つ為、ここまで騒ぐ事は出来なかった。


「右京、今日snake行くの?」

「ジェイが付き合えって言ってたからな。
連れてかれるかもしれん。」


snakeはジェイクの一番上の兄が経営するバーで、週末になると酒の強い右京は決まって拉致される。


「昨日遅かったから今日はパスしたいんだけどな~」


そう言って大きな欠伸をすると虎太郎は「お疲れさん」と笑った。


「俺はP2に行くから、時間あったら寄って?」

「了解~」


右京が返事すると、虎太郎は電子工学の講義を受ける為走って行った。

その後ろ姿を見送って彼も歩き出した。



キャンパスを歩きながら移動すると、すれ違う学生が声をかけて来る。


人種も肌の色もバラバラで右京もすっかりそこに溶け込んでいた。

ここでは自分も一人の人間として普通に生活出来た。


“ここでは”だけど…



『急がないと遅刻だぞ!』

『ああ、今行くよ!』


仲間にそう言うと右京は風を切って走り出した。




今日もそうやって彼の日常が始まった。





< 7 / 474 >

この作品をシェア

pagetop