彼に恋した夏(方言企画大阪弁編)
荷物をとりに2階へ上がり
太一くんの部屋にも寄る。


『太一くん、そろそろ行くよ。』


俺は勉強机に向かう
太一くんの背中に声をかける。


『………』


太一くんは
前を向いたまま何も言わない。


俺はゆっくり
太一くんに近付いた。


『…大丈夫だから。
あんまり無理すんなよ。』


座ったままの太一くんの頭を
撫でてやる。


太一くんは泣いていた。


『俺…がんばるから…っ』


『太一くんは…もう頑張ってるよ』


『…俺…ほんまに馬鹿で…
不安で押し潰されそうやったけど…ここまで出来たのは、ほんまに直樹くんの…おかげです。』


『…そっか。』


はは…

めちゃくちゃ嬉しいな。


太一くんの涙と言葉に
俺の胸も熱くなった。


俺に教える歓びを教えてくれたのは太一くんだった。


俺こそ…感謝してる。


この夏休み俺は
誰よりも長く太一くんと過ごした。


ほとんど毎日、朝も昼も夜も。



太一くんの努力は
俺が一番よく見てきた。


太一くんの頑張りは
俺が保障するよ。



『…応援してるから。』


太一くんは
涙を拭いながら

コクりとうなずいた。


『じゃあ…またな』



俺は
太一くんの肩を小さく叩いて
部屋を後にした。



『…………』

階段を下りながら、
俺は目頭が熱くなった。


単純に…
太一くんと離れるのが寂しい。


太一くんは
一人っ子の俺にできた兄弟だ。


太一くん…

ありがとう。


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