オフィスの甘い罠
半ばヤケでさらにグラスを
あおろうとしたら、タイ
ミングを見計らったかの
ように携帯の着信音が
それを止めた。



「……………?」



今日も鳴ってるのは紫苑のだ。



そしてディスプレイを
見ると、相手はママ。



(今日は何よ……?)



投げやりな態度で応答
ボタンを押すと、すぐに
ママの声がまくし立ててきた。



『あっ、紫苑?

ねぇ、あなた今日来ないの!?

っていうか、高城さんは
来ないの!?』



「は? 何ですかいきなり?」



あたしが行く行かないは
ともかく、なんで柊弥の
来店予定なんか聞かれ
なきゃいけないのよ。



だけどあたしの訝りなんて
お構いなしでママが続けて
きた言葉に、あたしも次の
瞬間ワインを噴きそうになる。
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