オフィスの甘い罠
『辞めさせないけどな』




(――アイツ、何を………!)



「……また電話しますっ」



通話口にそれだけ言うと
乱暴に電話を切り、すぐに
あたしは走り出した。

もちろん、会社に戻るためだ。



よくわかんないけど、
柊弥が何か手をまわしたに
違いない。


だってそうでもなきゃ、
派遣のあたしがあの会社の
直雇用に切替なんて話、
出てくるわけないんだから。




数十分後には会社に戻り
副社長室にたどり着いた
けど、ドアには鍵がかかってた。



やむを得ず残したままの
携帯メモリーから電話を
かけてみるけど、それも
留守電になる。



「どこ行ったのよ、
アイツは……!!」



怒りで熱が出てきそうだ。



アイツから事情を聞き
出して、思い切り顔に
ビンタでも食らわしてやりたい。
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