彼の視線の先、彼女。






「どうしても瀬璃を、忘れられなかった」




ドクンと跳ねた心臓。



その切ない目が私の全てを捕らえる。



いきなりの言葉に驚きが隠せなかった。






遠くで野球部が朝練をしていてかけ声が聞こえる。



意識が遠のきそうなくらい長い時間のように感じた。







「瀬璃が壱稀を好きなのは知ってる」




「・・・うん」




どうして皆幸せになれないんだろうってこの期に及んで思う。




好きな人と幸せになりたいと思うのはごく普通の事で、寧ろ思わないほうが変だと思ってしまう。





結局はきっと好きを抑えられないような気がするんだ。

私がそうだから。








< 98 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop