月見大福
プロローグ
ここは月見星。

彼女はこの星の姫メージェシック・グレダンジャ。

今向かっている先は大福星。

許婚のヴェリキ・フー王子に呼ばれ、会いに行くのだ。

「お父様、ヴェリキ王子はお行儀が悪くて好きませんわ。」

「こら、そんなことを言うものじゃないぞメージェ。彼にはだらしない才能があるんだ。」

「・・・・まったくフォローになってませんわね。」

いいかげんな会話を続けていると、遠くから誰かが手を振った。

「メージェ!!迎えに来てやったぞ!!」

大声で叫ぶ気品のない彼こそ、大福星の王子ヴェリキなのだ。

「気安く私のことをあだ名で呼ばないでもらえませんか?」

メージェは殺気立って船から下りて、王子の胸倉をつかんだ。

「ま、まあまあ。」

「だいたいこのような場所に呼び出したりして・・いったい何事ですの。」

「まるで何もなかったら呼び出しちゃいけないみたいな言い方だな。」

「当たり前です!!」

そう言ってそっぽを向いた。

「まあ、用はあるんだがな。」

ヴェリキはタッチパネル式のPCを出してある映像を見せた。

そこには商店街、公園、遊園地などが写っており、まるで監視カメラのような映像だった。

メージェはきょとんとした表情で、

「これは・・なんですの・・・?」

と質問した。

「地球だけど?」

「何故私にこの映像を・・・。」

「ここに行くからだろ?」

「・・・へ?」

すると突然宇宙空間であるはずの場所にブラックホールが現れた。

ヴェルキはメージェを抱きかかえると、その穴へと飛び込んだ。

「な、何をするのですかっ?!」

「俺らの新婚旅行だろ。」

笑顔でそう言った。

ブラックホールに飲み込まれる直前、メージェの父は気まずそうに手を振った。

「お、お父様はグルだったのね・・・。」

メージェはぶつぶつと呟きながら、ずるずると闇に吸い込まれていった。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop