月待ち人
-Side-ツキ

由奈と駅ビルで買い物をしてた日

私はエスカレーターの事故に少しだけ巻き込まれた。
軽く頭を打ったから、大事を取って検査をし、一週間の入院生活が余儀無くされた。

そこで1人の男の子と知り合った。由奈が連れてきたから彼女の恋人かと思ったらどうやら違う…隣に住んでた鈴瀬ちゃんの弟君らしい

名前は鳴瀬…ナル…セ…


どうして、この名前を呼ぶとこんなに苦しくなるの?

彼は毎日のように私の病室に来てくれた。
一週間ちっとも退屈しないで過ごせた。

でも…空元気なのがバレバレな彼。
元気が無い理由は私?
奥出くんになら何でも相談できると思ってたし…実際にしていた。

相談なんだけど…と言うと彼は毎回何だよとか言いながらも私の話を聞いてくれようとした。退院まで2日の昼間、日曜日で彼は朝から来ていた。

「何だよ相談って」


「好きな人が出来たんだ」

「えっ」

一瞬、奥出くんの顔が曇ったのは気の所為?

「倉本くん」

「くら…倉本、あいつココにきたんだ」


「うん…すごく優しかった。前から好きだったって言ってくれて」

嬉しそうな顔をして欲しいのに奥出くんの笑顔は明るくならなかった。

「あいつ、良い奴だから大丈夫だよ。オレなんかより優しいから」

「藤野と倉本なら大賛成だよ」



だったら…なんで、そんなに泣きそうなの?




私、あなたに何かしたの?

奥出くんにも笑って欲しいのに…。

「オ…オレさ用事あったんだ、悪いけど帰るね」

奥出くんの声は微かに震えていた。

なんでそんなに泣きそうに笑うの?


奥出くんは静かに立ち上がって私の事を見る事無く扉に手をかけた。


「なぁ…藤野…オレ、失恋したんだ」

奥出くんの言葉が頭から離れる事はありませんでした。
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