月待ち人

「ナルママ、ナルくん起きたでしょ」

「桜月ちゃん、おはよ。おかげで助かったわ」

「もぅ、起こさないでくれ。頼むから」

「サイドビジネスだもーん、無理です」


ケタケタ笑うツキの頭を軽く叩きカバンを持って立ちあがった。

寝起きが悪いオレを毎日迎えに来て一緒に登校する。
母親同士が親友ってだけで隣同士に家を構えた俗にいう幼馴染み

まぁ…今の関係は断ち切りたく無いから言わないけど…



オレはツキに幼馴染み以上の感情を持っている。
ツキに好きだって伝えても笑い飛ばされて終わるんだろうな。





「ナルくん?電車…乗り遅れるよ?」
ボーッと空を見上げてたらツキに声をかけられた。

「あ…悪い」
学校につけばツキはすぐに友人の姿を発見して走りよっていった。

「ナルくん、帰り待っててね」
幼馴染みの特権…無条件で一緒に帰れる
しかし興味無い振りをして適当に応える

「遅かったら先、帰るかんな」
本当はいつまでだって待っている自信がある…それぐらいオレはツキに依存していた。


「藤野さんって…奥出の幼馴染みなんだろ?紹介してよ」

オレの横に立ちバカげた事を言ってきた男…倉本俊太…一応、親友

「バーカ。お前相手じゃツキが可哀想だよ」
ふざけた口調でやり過ごす…オレがツキの事を好きだと分かったら…いずれ彼女の耳にも届いてしまう。
それだけは絶対に避けておきたい。





ツキは実際問題、男女問わずに人気が合った。

しかし…彼女をツキと呼ぶのはオレだけで…ねぇ、俺だけの特権なんて自惚れていいんだよな。
< 2 / 21 >

この作品をシェア

pagetop