らっく!!


「あんたが私が部屋に入ったことも気づかずにニヤニヤしながらクッションに埋まったあたりかしら?」


極上の笑みを浮かべた凪ちゃんはヒールをカツカツと鳴らしながら私のいるベッドにやってくる。


凪ちゃんが一歩近づいてくるたびに悪寒が背筋を走る。


冷気が…凪ちゃんから北極並みの冷気が漂ってくるっ!!


雪女さながらの絶対零度の微笑みを浮かべながら凪ちゃんは告げた。


「浮かれすぎ」


表情は穏やかなのに脅されてる気がするのは私だけですか…?


「す…すいません…」


…凪ちゃんの前で浮かれるのはやめよう。


私は顔を引きつらせながらそんなことを思った。


「わかればいいのよ?わかれば…」


凪ちゃんはそう言って、今度は携帯を取り出し電話をかけ始めた。


「あっ紘一さん?」


…紘一さん?


未だに正座を崩せずにいる私を尻目に楽しそうに会話は繰り広げられていく。


「美弦、ちゃんと家にいましたよ?はい、それじゃ」


通話終了―…。


やれやれと頭を掻きながら凪ちゃんは携帯を眺めた。


「紘一さんに何の電話…?」


私の知らないところで妙に仲良いんだよね、このふたり…。


疑わしげに凪ちゃんを見ているとふと視線が合う。


凪ちゃんはニヤリと意地悪に笑った。


「美弦が高屋先輩のところに連泊しないように監視ってとこかしら?」


「そんなことしませんっ!!」


ぷぅっと顔を膨らませて凪ちゃんを睨みつける。


紘一さんとの約束は一泊だけだったし!!


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