らっく!!



「うわっ!!」


入り口からそんな声が聞こえて私は瞑ってた眼を開けた。


誰…?


眼鏡をかけた男の子がこちらを凝視している。


私は慌てて立ち上がり、スカートについた埃を落とした。


「ごめんなさい!!もしかしてここって立ち入り禁止だったの…?」


男の子は私の言ったことが耳に入らない様子で尋ねてきた。


「…あんた…噂の佐崎さん…?」


知らない人に自分の名前を言い当てられるって微妙な気分だな…。


「勝手に入ってごめんなさい。直ぐに出て行きます」


私は男の子に頭を下げて教室から出て行こうとした。


「俺は…高屋愁はあんたのこと本気だったと思うよ…」


そう言って去り際に笑いかけられる。


「じゃあね、佐崎さん」


ポカーンとしていた私はハッと気がつき慌てて教室から飛び出した。


私と愁の交際に肯定的な人もいたのだということに少しだけ救われた気がした。





この不思議な男の子に再び話しかけられたのは数日後のことだった。



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